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03 03
インタビュー
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副会長(西日本組合)
中川 太
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地球環境保護のために
未利用資源の全国的な活用を目指す

副会長
(西日本組合)

中川 太

INTERVIEW インタビュー

地方企業こそ全油連の有効活用を

 私は、業界が発展していくことが自社の発展にもつながるのだという思いで、先代から全油連に携わってきました。当社は名古屋に所在しており、全国から同業者が集まる全油連に参加することで、地方では得られない業界全体の情報を収集することができました。全油連で得られた情報を持ち帰って実践することで、実際に当社は成長できたと実感しています。
 これまでの20年間で油脂業界は、リーマンショックやBSE、狂牛病など、多くの問題を経験してきました。その中で、UCオイルの相場が落ち込むなど危機的な状況もありましたが、油脂業界が社会的に必要な業界であったこともあり、なんとか存続することができました。景気の波への対策はもちろん必要ですが、SDGsの動きが全国的に活発化している昨今、今後はサプライヤーとして選ばれる企業を目指すという考えが重要になってくると思います。そういう高い意識を持った方々が、全油連には多く参加されていると感じています。

未利用資源の全国的な活用を目指して

 私は現在、全油連の中で未利用資源利活用分科会(以下、分科会)の推進役を担っています。未利用資源とは、UCオイルのうち、現在資源としてリサイクルに使用されていないものを指します。例えば、家庭や飲食店から排出されるUCオイルです。分科会では、主にこれら2つの回収および活用を全国的に稼働させるためのシステム構築を検討しています。
 未利用資源をリサイクルできるようにするまでには、検討課題が数多くあります。家庭から出るUCオイルを回収するために、まずはエコステーションを設置するなど、仕組みづくりから始めなければなりません。また、飲食店には、シンクから流した水が下水に到達するまでに、水と油を分離させるグリストラップと呼ばれる升のようなものがあります。ここに貯まったUCオイルは通常可燃処分されますが、精製する場合は、どの機械が最適なのかといった検討も必要です。そして、安全面や衛生面の問題をクリアし行政からの許可を取得することも重要でしょう。
 このような多くの検討課題に対して、最適な仕組みを構築していくのは大変な作業ですが、全油連として各組合の皆様の意見も取り入れて現実化を目指したいと思います。
 未利用資源の潜在的なニーズは非常に大きいです。そのため、これが実現できれば、脱炭素化を推進する日本において、我々油脂業界は重要な役割を担うことになると考えています。

地球環境の保護のために重要な油脂業界

 ドイツやアメリカなどでは、我々のような、いわゆる産業廃棄物処理業が、地球環境の保護に重要な役割を持つ業種として認識されているのはご存じでしょうか。これらの国では、業界に対する評価が高く、就職希望者にも人気が高い業種なのです。一方で、残念ながら日本ではまだその認識が薄いのが現状です。
 実際に我々は、回収したUCオイルがすばらしい資源に生まれ変わる手助けをするキーパーソンです。SDGsの流れから、これまでの状況を打破する波が少しずつきていると感じますが、排出事業者側も自分たちのUCオイルを資源として再利用してほしいという能動的な意識が今以上に高くなれば、それに伴って排出されるUCオイルの質も向上するでしょう。また、そのような気持ちで託された我々も、高い意識でこの仕事に取組むことができるようになるはずです。
 全油連としては、引き続き未利用資源活用のためのシステム構築と実用化に向けての検討を行っていきます。実用化ができたら、次に全国への普及活動も行っていく予定です。時代の後押しもあって、油脂業界はこれからもっと拡大していくと思います。それに対応していくには、我々だけでなく排出事業者の協力も必要です。
 いつか、ドイツやアメリカのように油脂業界が憧れの業種となることを目指して、全油連としても先導していきたいと思います。より多くの人に油脂業界の魅力が伝わり、より多くの人が油脂業界で誇りをもって働けるような社会になる。そう願っています。

       

(取材:2021年11月10日)